海外ショップほど、このページが効く理由
オハイオ州のお客様が日本のショップで買うとき、リスクははっきり体感されています。荷物は海を渡り、返品はまた海を渡り、売り手は13時間の時差の向こうにいる。「何かあったときにどうなるか」を書いたページは、そのまま安心の代わりになります。返品条件を明記したショップは、条件が厳しくても、何も書かないショップより購入率が高い。無言は「自己責任でどうぞ」と読まれます。
もう一つ、もっと現実的な理由があります。決済事業者やモール、アプリ審査は、あなたのサイトを実際に見ます。チャージバック(不当請求申立)の判断でも、購入前にポリシーが見える場所にあったかが効きます。Paddle・Stripe・PayPalはいずれも、利用規約・返金方針・プライバシー通知が存在し、フッターから辿れることを前提にしています。ページがないと、規制当局より先に入金が止まります。
法律の話も、恐れるほどではありませんが実在します。特定商取引法は、買い手がどこに住んでいようと、日本の販売者であるあなたに適用されます。アメリカ側では、FTCが価格・送料の誤認表示を、CAN-SPAMが宣伝メールを規律し、カリフォルニア・コロラド・コネチカット・バージニア・テキサスなど州レベルの個人情報法が、事業者の所在地ではなく「誰のデータを扱っているか」で及びます。小さな文具店に弁護士は必要ありません。正直に書かれた7ページが必要です。
必要な7つのページ
細かい話に入る前に、全体像です。すべてフッターからリンクし、どの商品ページからも1クリックで辿れるようにしてください。
- ページ1
- 特定商取引法に基づく表記(日本語+英語)。法律上の必須。
- ページ2
- キャンセル・返品・返金 — アメリカの買い手が実際に読むページ。
- ページ3
- プライバシーポリシー — 何を集め、なぜ、誰に渡し、どう削除できるか。
- ページ4
- 利用規約 — 契約成立時点、通貨、責任範囲、準拠法。
- ページ5
- 配送と通関 — 目安日数、関税は誰が払うか、紛失時の対応。
- ページ6
- メール配信と同意 — オプトインの方法、配信停止、事業者の住所。
- ページ7
- Cookieとトラッキング — アクセス解析や広告タグを使うなら必要。
1. 特定商取引法の表記を、英語でも出す
多くの方がすでにご存じで、そして英訳でつまずくのがこれです。特商法は、事業者名、住所、電話番号、メールアドレス、責任者、税込価格、送料などの追加費用、支払方法と時期、引渡し時期、返品・キャンセルの条件を表示するよう求めています。売り先がアメリカでも、あなたは日本の事業者なので表示義務は残ります。
実務上の壁は住所と電話番号です。自宅から個人で販売している方が抵抗を感じるのは当然で、認められている方法もあります。バーチャルオフィスやレンタルオフィスの住所を使い、「請求があったら遅滞なく開示します」と明記する方法です。ただし限界も理解してください。決済事業者やモールは、非公開でも検証可能な情報を求めますし、実際に請求されたら開示する義務が生じます。
そして必ず両言語で出してください。日本語版は法律を満たすため。英語版はまったく別の役割で、「登記された実在の事業者が背後にいる」ことをアメリカの買い手に見せるためです。英語ページの見出しは直訳ではなく Legal Notice (Act on Specified Commercial Transactions) とし、項目の順番は日本語版と揃えます。
よくある事故が一つ。特商法表記の中の「返品について」と、独立した返品ポリシーページの内容が食い違っているケースです。片方が「返品不可」で片方が「30日以内可」だと、審査する決済事業者はそれだけで警戒します。
2. キャンセル・返品・返金 — 売上を左右するページ
通常のネット通販にクーリングオフは適用されません。つまり、条件はあなたが書いたものがすべてです。この自由が落とし穴になります。アメリカの買い手はAmazonや国内ショップで作られた期待値を持って来るので、書かれていない=敵対的、と読みます。
法律文ではなく、具体的な質問への答えの列として書いてください。発送前ならキャンセルできるのか、何時まで可能か。返品期間は「発送日」ではなく「到着日」から何日か。返送料は誰が負担するか。名入れ・日付入り・開封済みは対象外か。破損して届いた場合はどうするか、そのとき何を送ってもらうか(通常は商品と外箱の写真を、何日以内に)。届かない場合、いつ紛失として扱うか。返金はどの方法で、どの通貨で行うか。
文具ショップの現実的な一例。発送前ならキャンセル無料。未開封・未使用に限り到着から14日以内の返品可、返送料はお客様負担。破損・誤配送は到着から7日以内に写真をいただければ全額返金または交換。名入れ・日付入り商品は対象外。返金は商品到着確認後5営業日以内に元の支払方法へ。厳しくても構いません。曖昧なのが問題です。
見落とされがちな2点。まず通貨です。二度両替されると買い手の手元は数ドル減り、その金額に不釣り合いなほど怒られます。「返金は請求時と同じ通貨で行い、為替差は当店では管理できません」と書いてください。次に関税です。買い手がアメリカで払った関税や通関手数料は、運送会社と政府に渡ったお金で、あなたの手元にはありません。そう書いた上で、運送会社に還付請求できる場合があると案内する。書かなければ「店が持っている」と思われます。
デジタル商品や講座を売る場合は別の書き方が要ります。購入直後にアクセスできること、ダウンロード後は返金できるのかできないのかを明示してください。決済事業者が販売者(Merchant of Record)となる場合は、その返金窓口も併記します。
3. プライバシーポリシー — アメリカの州法が効いてくる
あなたはすでに個人情報を扱っています。氏名、配送先、メールアドレス、購入履歴。アクセス解析や広告タグを入れているなら行動データも。日本の個人情報保護法は利用目的の明示と本人からの請求への対応を求めます。アメリカ側は州ごとの法律の集合体で、いくつかは「所在地」ではなく「誰のデータを持っているか」で及びます。カリフォルニアのCCPA/CPRAは一定の規模要件を超えると射程に入り、その考え方——開示する、削除に応じる、オプトアウトなしに販売しない——は十数州に広がりました。
小さなショップなら、正直な1ページでほぼ足ります。誰が運営し、どこに連絡すればよいか。何を、なぜ集めるか(発送のための氏名住所、注文確認のためのメール、同意がある場合のみニュースレター、決済情報は決済事業者が扱い自店では保存しない、解析データはどのページが役に立っているかを知るため)。渡す先を種類だけでなく名前で書く(Shopify、Etsy、決済事業者、メール配信サービス、解析、配送会社)。
そして権利です。データの写しの請求、訂正・削除の請求、いつでも配信停止できること、その連絡先と回答までの目安日数を書きます。保存期間も書いてください。日本の税務・輸出書類の保存義務があるので、「請求があれば削除します」には「ただし取引記録は法令に基づき保存します」という正直な但し書きが必要です。
実態より多く書かないこと。「第三者に一切提供しません」は、配送ラベルに住所を書いた時点で嘘になります。「銀行水準の暗号化」は、答えたくない質問を呼び込みます。自信のあるマーケティング表現より、素朴な正確さのほうが守ってくれます。
子ども向けでない場合も一文入れておくと安心です。「本サイトは13歳未満を対象としておらず、意図的に情報を収集しません」。
4. 利用規約 — 退屈だけれど、あなたを守るページ
利用規約は買い手との契約であり、越境販売では本来かなり不確かな問いに答えます。どこの国の法律で、どこの裁判所で争うのか。「日本法を準拠法とし、◯◯地方裁判所を第一審の専属的合意管轄とする」。この一文のために規約があると言ってもいいくらいです。
あとは素直に。事業者としての表示。注文は申込みであり、発送をもって承諾とすること(価格誤表示や在庫切れのときに、きれいにキャンセルできます)。請求通貨。価格に輸入関税・現地税は含まないこと。写真はイメージであり、手仕事や紙製品には個体差があること。デザイン・写真・文章の知的財産権。法律の許す範囲での責任制限。あなた側からのキャンセルやアカウント停止の扱い。
文体はショップの他のページと揃えてください。アメリカ向けテンプレートの直訳には、日本の個人事業主には意味のない条項——デラウェア州での仲裁、州売上税、適用されない法令への参照——が必ず混ざります。長くて借り物より、短くて正確が勝ちます。
5. 配送・通関・関税 — 最も苦情が来る開示
越境の文具販売で怒りのメールが来る最大の原因は、予期しない関税請求です。そしてこれは、商品ページの2文と、その裏にあるきちんとした配送ページで、ほぼ完全に防げます。
まず関税を誰が払うか。小規模の日本の売り手はほぼDDU/DAP、つまり到着時に買い手が関税・税・通関手数料を払う形です。買い手の言葉で書いてください。『Import duties and taxes are not included in the price. If your country charges them, they are collected by the carrier on delivery and are the customer's responsibility.』フッターの奥ではなく、価格の近くに置きます。
次に正直な日数。発送までの準備日数と、輸送日数を分け、約束ではなく幅で示します。使う配送会社、追跡の有無、通関で止まったときの扱い(よくあることで、こちらでは制御できないこと)も書く。そして税関申告についても書いてください。実際の価値で申告すること、「贈り物」扱いや過少申告の依頼には応じられないこと。ポリシーページに先に書いておけば、丁寧に、そして恒久的に断れます。
最後に紛失と破損。いつ紛失とみなし、そのとき何をするか、買い手に何を求めるか。起きる前に書いてあれば、やりとりは荒れません。
6. メール配信・同意・CAN-SPAM
アメリカの読者にニュースレターを送るなら、CAN-SPAM法が適用されます。難しくはありませんが具体的です。件名やヘッダーで誤認させないこと。商業メールだと分かること。有効な物理的な住所を記載すること。機能する配信停止を用意し、10営業日以内に反映すること。配信停止に課金したり、ログインを必須にしたりはできません。
日本の特定商取引法と特定電子メール法は同じ方向で、さらにオプトイン(事前同意)を求めます。送る前に同意を得る、いつどう同意したかの記録を残す、送信者名と連絡先を書く。
実務としては3つです。本人が能動的に同意する登録導線にする(チェック済みの同意欄を購入手続きに紛れ込ませるのは避ける)。配信サービスが保存している同意記録を残す。すべての配信のフッターに、事業者名・住所・ワンクリック配信停止を入れる。BrevoやMailchimpなら標準で入っています。危ないのは、自分のアドレスから直接送るように切り替えたときです。
無料特典と引き換えにメールを集めている方へもう一つ。その後に何を送るかを書いてください。『無料の発送カレンダー』のあとに予告なく毎週の宣伝が来る——これが苦情率を上げ、送信ドメインをブロックさせる典型です。
7. 商品表示・安全基準・書いてはいけないこと
FTCはアメリカ市場での「正直さ」を監督します。説明、比較、推薦、価格表示が誤認を招いてはいけません。文具は比較的おだやかな分野ですが、触ると危ない線が数本あります。
一つ目は、偽の緊急性と架空の割引。『¥3,000 → ¥1,800』は、実際にその価格で売っていた必要があります。訪問のたびにリセットされるカウントダウンは欺瞞的取引とみなされます。
二つ目は、レビューと提供品。レビュアーに無償提供したり投稿に対価を払ったりした場合、その関係は相手側で明確に開示される必要があります。FTCは未開示の推薦に厳しくなっています。PRサンプルを送るときは、開示を文面で依頼してください。レビューの自作・購入は論外です。
三つ目はカテゴリ別の規制。12歳未満向けとして売る商品はCPSIA(消費者製品安全改善法)の対象になり、試験やトラッキングラベルが必要になることがあります。子ども向けの鉛筆・クレヨン・シールセットも自動的に例外ではありません。化粧品に近いもの、食品に触れるもの、香りつきの商品にもそれぞれ表示規制があります。玩具と読まれうる商品を子ども向けに出す前には、専門家に確認を。
最後にフォントと画像。個人利用限定のフォントを使ったデザインや、他人のキャラクターを使った商品は、ショップを失う最短ルートです。アメリカのプラットフォームは知的財産の申立てにまず対応し、質問は後回しです。ライセンスの控えは必ず保管してください。
Etsyと自社ショップ、どこまでが自分の責任か
Etsyでは、決済に関する規約はプラットフォームが用意し、決済とデータのコンプライアンスの多くも引き受け、準備日数・返品・ショップポリシーの入力欄が用意されています。ただし義務が消えるわけではありません。ポリシー欄は正確に埋める必要があり、特商法の情報も表示が必要(そのための販売者情報欄があります)、買い手へ自分で送るメールもあなたの責任です。
Shopify・Squarespace・自社構築なら、7ページすべてがあなたのものです。テーマはフッターのリンクは作ってくれますが、中身は書いてくれません。自動生成されるテンプレートはアメリカの売り手向けで、州、仲裁、売上税など、あなたに当てはまらない条項が入ります。生成物は骨組みとして扱い、書き直してください。
どこで売るにせよ、費用ゼロで効くことが一つ。返品期間と関税の一文を、リンクの奥ではなく商品ページ本体に置くこと。アメリカからの流入に対して、日本のショップができる最も費用対効果の高い改善です。
弁護士費用をかけずに書く手順
まず日本語で、自分の言葉で、この記事の問いに一つずつ答える形で下書きします。自分の運用は、どんなテンプレートよりあなたのほうが詳しい。次に、裁判所ではなく買い物客に向けた英語に訳します。短い文、具体的な数字、shall も hereinafter も使わない。
そのうえで3点だけ確認。ページ同士が矛盾していないか(特商法表記・返品ページ・商品ページの日数は同じ数字か)。各ページに最終更新日があるか。フッターからリンクされ、購入手続きからも辿れるか。
お金を払って相談する価値が本当にあるのは、顧客データを大量に持つ場合、子ども向け商品を売る場合、アメリカ国内の物流会社を使う場合、州のプライバシー法の基準に届く規模になった場合です。年に数百件の発送をする作家さんなら、自分で正直に書いたページ+英文チェック、が釣り合った答えです。
そして年に一度は見直してください。免税枠は動き、州法は増え続け、あなたの準備日数も季節で変わります。2年間まちがったままのポリシーは、ページがないより悪い。「本気で書いていない」証拠になるからです。
輸出スタジオ
書類まわりは、道具として用意しています
輸出スタジオには、英日の配送ポリシー生成、コマーシャルインボイス作成、HSコード検索、開店前チェックリストが入っています。上の実務の半分がそのまま道具になっているので、配送・通関・関税のページが実際の運用と一致します。
輸出スタジオを見るThe Commons
英語のポリシーを、誰かに読んでもらう
メンバーは翻訳チャンネルと月次のオフィスアワーにポリシーを持ち込めます。返金トラブルを左右する一文を第三者に見てもらえることは、テンプレートをもう一枚増やすより価値があります。
The Commons に参加するよくある質問
お客様が全員アメリカでも、特商法の表記は必要ですか?
必要です。義務は買い手の所在地ではなく、日本の販売者であるあなたに紐づきます。法律を満たすために日本語で、取引相手を見せるために英語でも掲載してください。
「返品不可」と書いてもいいですか?
通常のネット通販にクーリングオフはないため、購入前に明確に表示していれば適法になり得ます。ただし売上は落ちますし、決済事業者は嫌がります。未開封・14日以内・返送料お客様負担・名入れ品は対象外、といった限定的な条件のほうが、たいていは得です。
アメリカのプライバシー法は、小さな日本のショップにも適用されますか?
州法の多くは、扱う住民のデータと売上・件数の基準で適用が決まるため、ごく小規模なら基準未満のことも多いです。ただし、明確なプライバシー通知を出し、削除と配信停止に応じる運用にしておけばどちらでも安全ですし、プラットフォーム側が要求してきます。
アメリカの関税は誰が払いますか?
小規模販売ではほぼ買い手が、到着時に運送会社を通じて払います。それ自体は問題ありません。ただし価格の近くに明記していないと、返金要求に変わります。
プラットフォームが自動生成するポリシーをそのまま使えますか?
骨組みとして使ってください。生成物はアメリカの売り手向けで、州・売上税・仲裁など当てはまらない条項が入り、必要な特商法の項目は入っていません。自分の実際の運用に書き換えてください。
これを深く学べる講座はありますか?
あります。「ポリシー・デスク」です。どのスタジオにも属さない単独コース(¥14,800)で、6つのページを日英両方で、穴埋め式の下書きとともに書き上げます。発送と通関書類の実務は引き続き輸出スタジオ、利益の中の関税と税はコスト&プライス・スタジオで扱います。
