アメリカの売り手はどこで売っているか
アメリカの小規模な文具ビジネスは、大きく二つに分かれます。マーケットプレイス型(主にEtsy)と、自社サイト型(Shopify、Squarespace、Wix、Big Cartel、WooCommerce)です。前者は「お客さまを借りる」、後者は「お客さまを育てる」方法です。
どちらが正しいということはありません。成功している個人ブランドの多くは、まずマーケットプレイスでアメリカ人が何を買うのかを学び、リピートされる商品が分かってから自社サイトを開いています。
日本の作家さんに最も多い失敗は、最初から一番高機能なものを選んでしまうことです。月5,000円を払って誰も来ないショップを眺めるより、Etsyで10件の注文がある方がずっと前に進めます。
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比較表
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| プラットフォーム | 目安費用 | 設定の手間 | 自然流入 | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|
| Etsy | 出品0.20ドル+取引手数料約6.5%+決済約3% | 低い — 半日でショップ開設可能 | 集客力が高い | アメリカ市場を試したい初めての出品者 |
| Shopify | 月額約29〜39ドル+決済約2.9%+30セント | 中程度 — 週末をかければ形になる | 自然流入はゼロ。集客は自分で | 既にファンがいて卸と小売を伸ばしたいブランド |
| Squarespace | 月額約23〜36ドル(EC込み)+決済約2.9% | 低〜中 — テンプレートがデザインを担ってくれる | 自然流入なし | 世界観重視の作家・スタジオ、商品数が少なめのブランド |
| Wix | EC向けプラン月額約17〜36ドル+決済手数料 | 低い — コード不要のビジュアル編集 | 自然流入なし | 低予算で自由にデザインしたい出品者 |
| Big Cartel | 5商品まで無料、以降は月額約15〜30ドル | とても低い — 1時間で公開できる | 自然流入なし | 少量・限定ドロップ中心の作家 |
| WooCommerce (WordPress) | ホスティング月額約10〜30ドル+プラグイン。ソフト自体は無料 | 高い — サイト管理者を自分で担う | 自然流入なし。ただしSEOの上限は最も高い | 記事中心で、技術に強い協力者がいるブランド |
| Payhip | 無料プランは手数料5%、月額約29ドルで0% | とても低い | 自然流入なし | 印刷素材・PDF・デジタルプランナー・フォント販売 |
各プラットフォームの長所と短所
Etsy
お客さまの方から見つけてくれるマーケットプレイス。
出品0.20ドル+取引手数料約6.5%+決済約3% · アメリカ市場を試したい初めての出品者
長所
- 和紙テープやノートを探している米国の買い物客が最初からいる
- 決済・為替・多くの税処理をEtsyが代行してくれる
- 英語の出品テンプレートと翻訳機能が標準搭載
- 自分のファンがいなくてもEtsy広告で露出を買える
- レビューが貯まると無名の日本ブランドでも信頼されやすい
短所
- 手数料が積み重なる。広告込みで売上の12〜15%を想定
- 顧客のメールアドレスは自分のものにならない
- 検索順位やポリシー変更をコントロールできない
- 自分のデザインの安価な模倣品と並んでしまう
- ブランド表現はバナーと写真の範囲に限られる
Shopify
本格的に育てるための、自分のためのストア。
月額約29〜39ドル+決済約2.9%+30セント · 既にファンがいて卸と小売を伸ばしたいブランド
長所
- ブランド表現・メール獲得・顧客データをすべて自分で管理できる
- 配送ラベル、関税前払い(DDP)、定期購入の優れたアプリが揃う
- 多通貨・多言語のストアを1つの管理画面で運用できる
- 卸価格やFaire連携の設定がしやすい
- 月10件から数千件まで移行なしで拡張できる
短所
- 売れない月でも月額費用がかかる
- 自動的にお客さまは来ない。SEO・メール・SNSの作業が必須
- アプリ費用がすぐ膨らむ(1つ月10〜30ドル)
- 管理画面は英語中心。日本語サポートはやや手薄
- 商品数が少ないうちは過剰
Squarespace
美しい世界観のサイトに、販売機能を添えて。
月額約23〜36ドル(EC込み)+決済約2.9% · 世界観重視の作家・スタジオ、商品数が少なめのブランド
長所
- テンプレートが本当に上質。デザイナー無しでも日本らしい世界観が出せる
- サイト・ブログ・ショップ・メール配信が1契約に含まれる
- 設定項目が少なく、Shopifyより学習コストが低い
- 作品紹介とストーリーを商品と一緒に見せるのが得意
- ワークショップ販売用の予約機能も内蔵
短所
- 配送・関税・在庫まわりの機能はShopifyより弱い
- アプリが少なく、標準機能の範囲で運用することになる
- 商品数が多い場合やバリエーションが複雑な場合には不向き
- 卸・B2Bは工夫が必要
- 集客機能はなく、流入はすべて自力
Wix
ドラッグ&ドロップで自由に、無理なく。
EC向けプラン月額約17〜36ドル+決済手数料 · 低予算で自由にデザインしたい出品者
長所
- 本格的なEC機能を持つホスティング型の中では最も安価
- 完全なビジュアル編集で、要素を自由に配置できる
- 日本語のインターフェースとサポートが充実
- 予約・ブログ・簡易メール配信が付属
- 無料プランで練習してから移行できる
短所
- 自由度が高いぶん、重く雑然としたサイトになりやすい
- SEOは可能だがShopifyやSquarespaceほど整理されていない
- 後から他社へ移行しづらい
- 国際配送・関税まわりのツールが少ない
- 公開後にテンプレートを変更するには作り直しが必要
Big Cartel
小さく、安く、静かに。少数の商品向け。
5商品まで無料、以降は月額約15〜30ドル · 少量・限定ドロップ中心の作家
長所
- 最初の5商品までは本当に無料
- 作家向け設計。ドロップや限定品、一点ものに強い
- 設定も保守もほとんど不要
- 固定費が低く、テスト段階のリスクがほぼない
- 余計な要素のないすっきりしたショップページ
短所
- 機能が非常に限られる。本格的なSEO・アプリ・自動化は不可
- 分析が弱く、顧客データベースと呼べるものがない
- 受注が安定すると必ず手狭になる
- 卸・セット販売・定期購入への対応がほぼない
- マーケットプレイスの集客は一切なし
WooCommerce (WordPress)
技術が好きな人のための、最大限の自由度。
ホスティング月額約10〜30ドル+プラグイン。ソフト自体は無料 · 記事中心で、技術に強い協力者がいるブランド
長所
- プラットフォーム月額費用なし。ホスティングとプラグインのみ
- 長文記事とSEOの上限が本ガイド中で最も高い
- データ・デザイン・決済フローを完全に自分で管理
- 日本の決済手段を含む膨大なプラグイン群
- 自分以外に店を止められる相手がいない
短所
- 更新・バックアップ・セキュリティ・障害対応は自分の責任
- プラグインの競合で最悪のタイミングに停止することがある
- 丁寧に設定しないと表示が遅くなりがち
- 外国語での学習コストが高い
- 本当のコストは料金ではなく自分の時間
Payhip
デジタル商品・印刷素材を売る一番シンプルな方法。
無料プランは手数料5%、月額約29ドルで0% · 印刷素材・PDF・デジタルプランナー・フォント販売
長所
- デジタル配信・ライセンス・EU/UKのVAT処理を自動化
- 無料で開始でき、売れたときだけ費用が発生
- クーポン・セット販売・アフィリエイトが標準搭載
- Payhipのページでも、他サイトへの埋め込みでも販売可能
- 配送・通関・関税を考えなくてよい
短所
- 物理商品の販売には向かない
- ストアのデザイン自由度が非常に低い
- マーケットプレイス機能はなく、集客はすべて自力
- 分析機能はShopifyに比べて簡素
- 単独ではなく、他と併用するのが一般的
日本から売る場合の注意点
- 入金:Shopify Paymentsは日本の全事業者が米ドル販売で使えるわけではありません。PayPalやStripeが必要かどうか、また銀行が外貨送金に対応しているかを確認しましょう。
- 関税と少額免税:プラットフォームは通関を代行しません。どれを選んでも、関税を織り込んだ価格設定が必要です。詳しくは関税ガイドをご覧ください。
- 消費税と特定商取引法:海外発送は基本的に免税取引ですが、自社サイトには特商法ページが必要です。マーケットプレイスはその枠組みを用意してくれますが、自社サイトは自分で整えます。
- 言語:日本語対応が最も手厚いのはEtsyとWixです。Shopifyの管理画面も日本語で使えますが、上級アプリの多くは英語のみです。
- 時差:自社サイトでは問い合わせ対応をすべて自分で、しかも深夜に行うことになります。マーケットプレイスはその負担を一部引き受けてくれます。
3段階のシンプルな進め方
01
第1段階 — 需要を確かめる
Etsy(デジタル商品ならPayhip)から始めます。20点の出品、正直な写真、アメリカ人の検索の仕方に合わせた英語タイトル。目的は利益ではなく、どの商品がリピートされるかを知ることです。
02
第2段階 — 関係を自分のものにする
月30件ほどになったら自社サイトを追加します。世界観で売るならSquarespace、物流や卸で伸ばすならShopify。初日からメール収集を始め、Etsyも並行して続けましょう。
03
第3段階 — 事業にする
売上の主軸を自社ストアへ移し、卸やFaireを追加し、関税込みの価格を設計します。マーケットプレイスは「発見してもらう場所」として残します。
よくある質問
日本の文具作家はEtsyとShopifyのどちらから始めるべきですか?
アメリカにまだファンがいないならEtsyです。Etsyは買い物客を連れてきてくれますが、Shopifyは連れてきません。月30件ほどの注文が安定してきたら、ShopifyやSquarespaceで顧客との関係を自分のものにし、利益率を高めましょう。
Etsyと自社サイトを同時に運営しても問題ありませんか?
問題ありません。むしろ定着したブランドの多くがそうしています。価格を揃えて不信感を与えないようにし、同梱カードでEtsyのお客さまを自社のメールリストに招待しましょう。
小規模な日本ブランドにとって一番安いのはどれですか?
Big Cartelは5商品まで無料、Payhipはデジタル商品なら手数料5%で無料です。Etsyは月額無料ですが広告込みで1件あたり12〜15%程度かかります。つまり最安かどうかは表示価格ではなく販売数で決まります。
印刷素材と物理商品を同じプラットフォームで売れますか?
売れます。EtsyもShopifyもデジタルダウンロードと発送商品を併売できます。Payhipはデジタルの売上が大きくなり、ライセンスやVAT処理を自動化したい場合に追加を検討してください。
プラットフォームの選択は関税に影響しますか?
直接は影響しません。関税は商品・価格・分類で決まります。違うのは機能面で、ShopifyやWooCommerceは決済時に関税を提示・徴収できますが、Big CartelやPayhipにはその機能がありません。
あとから乗り換えるのは大変ですか?
商品情報と顧客リストはどのサービスからも書き出せます。ただし検索順位とレビューは移せません。2つ目に選ぶものを長期の本拠地にするつもりで選びましょう。
